増益

ワクワク・感動企業の秘密:1
感動ホテル ザ・リッツ・カールトン大阪

第46号2006年1月

資金
2006年 社長の最新資金対策!
節税
最近の税務相談事例から:12 税務署からみた景気回復、会議費
増益
ワクワク・感動企業の秘密:1
感動ホテル ザ・リッツ・カールトン大阪

ザ・リッツ・カールトン大阪は大阪駅から徒歩5分のホテルだ。世界の著名人から「もうひとつの我が家」として愛される。日経ビジネス、日経MJなど、各誌のホテルランキングでは常に上位をしめる。リッツの心に残るホテルの感動サービスの秘密に迫る。

ザ・リッツ・カールトン大阪

住所:大阪市梅田区
建物:地上40階、地下5階
客室:292室
開業:1997年
従業員:社員530人、パート80人

寒天メーカー、伊那食品工業(伊那市)は、信州の農家が副業として細々と作ってきた寒天の用途拡大と工業化を進め、業務用で国内シェア80%をもつ。47期増収増益の奇跡を続ける不思議な会社だ。でも、知れば知るほど傾聴に値する会社だと分かってきました。最終回は、その創業者、塚越寛会長です。

感動のエピソード

  • 「リッツに宿泊した客がホテルに老眼鏡を忘れたことに気づき、新幹線の中からホテルに電話をしたところ、当日、ハウスキーパーが東京まで老眼鏡を届けてくれた。」
  • 「リッツに滞在したとき、部屋まで案内される途中で好きな食べ物や果物について雑談した。その際に「オレンジが好き」と話した。それ以降、宿泊する度に、部屋にはオレンジが置かれている。

同ホテルは宿泊客の約45%が2回目以上のリピーター客。しかし、客を何度も呼び寄せる原動力は施設や調度品だけではない。「もう一つの我が家」を目指す従業員のホスピタリティー(もてなしの心)が宿泊客をひきつけている。

このリッツカールトン大阪のサービスの秘密は、「理念の明示」と「その徹底」につきる。でもなぜ社員がそんなことを出来るのか? 感動のサービスが生まれるホテルの秘密を探ってみよう!

2つのCS〜サービスのサイクル〜

これは特徴的だ。リッツでは、サービスのサイクルは従業員の満足から始まると考えている。当然、企業だから最終目標としては利益を上げるということが使命となるが、最初から収益を求めるのではなく、まず、従業員の満足からと考えている。これは、「満足度の高い従業員がサービスしてはじめて、お客様も満足が得られる」というリッツの考え方から始まる。このようないい意味の循環をリッツでは「サービスのサイクル」と呼んでいます。リッツでは、社員、アルバイトから食品の納入業者までを含めて内部の顧客=インターナルカスタマーと呼んでいる。

では、次に感動のサービスを生む従業員教育の秘密を探る。

4つのキープロセス

リッツの人材育成は、「人事の四つのキープロセス」からなる。「クオリティ・セレクション・プロセス」「2日間のオリエンテーション」「オン・ザ・ジョブ・トレーニング」「ラインナップ」。これらを全部合わせまして、「人事の四つのキープロセス」という。

人事4つのキープロセス

クオリティ・セレクション・プロセス

人材育成の第一ステップは「クオリティ・セレクション・プロセス」。リッツではQSPと略す。これは従業員を選考する際の一種の判定ツールだ。

リッツでは従業員を「雇う(ハイヤー)」とは言わずに、「セレクトする」と言う。リッツでは、セレクトの方法は、学歴、経歴、国籍、男女の基準ではなく、ご本人の持って生まれた性格、これをタレントと言っており、このタレントで従業員をセレクトする。タレントは、人間が持って生まれた「人にサービスしたい」というサービス精神、それから気配り、積極性、チームワーク等々です。

具体的には、「職業倫理」「自尊心」「説得力」「積極性」など11ぐらいのテーマについて、約55問を○×で質問し、タレントに優れた人をセレクトする。

会社における最も重要な財産、つまり「従業員=正しい資質×教育」ということがわかった。タレントは、ここの「正しい資質」に当たる。

2日間のオリエンテーション

「人事の四つのキープロセス」の第二ステップは、従業員に2日間のオリエンテーションだ。このオリエンテーションでは、通称「クレドカード」といわれるカードの内容にいて、総支配人やキースタッフらから入れ替わり立ち替わり説明する。この2日間で従業員は、リッツ・カールトンの価値観、哲学を完全に理解する。その上で次のプロセスであるOJTに移る。

このクレドカードの正式名称は「リッツ・カールトンゴールド・スタンダード」といいます。クレドカードは、下の図の構成よりなります。

リッツのゴールドスタンダードの構成

ゴールドスタンダードの構成    イメージ
1:クレド(ラテン語で信条)    憲法
2:モットー 基本方針
3:従業員への約束
4:サービスの3ステップ
5:ベーシック(20項目) 行動基準

このクレドカードは名刺サイズの4つ折りのカードなので、従業員は常にこれを携帯していす。「クレド」とはラテン語で訳すと「信条」となります。リッツ・カールトンの全従業員、パートタイマーであろうとアルバイトであろうと、これを常に携帯して勤務しています。

ホテルですから、いろんなマニュアルやハンドブックがあります。リッツ・カールトンの中で、このクレドカードが一番上位に位置するルール、つまり憲法となっています。では、クレドには何が書かれているかをご紹介しましょう。

まずリッツ・カールトンでは、「お客様への心のこもったおもてなしと快適さを提供することを最も大切な使命と心得ています」ということですね。

クレド

具体的にリッツのサービスをみてみます。

サービスには、ファンクション(機能)パーパス(目的)がある。例えば、ドアマンは、玄関でドアを開けたり、閉めたりするポジションです。でも、開けたり、閉めたりするだけだったら、自動ドアを置けばいいのです。なにも、人間を置く必要はないわけです。

では何のために人間を置いているのかと言うと、ドアマンのパーパスは、お客様が来られたときに温かいお迎えをする。お客様が出発されるときに温かいお見送りをする。「だれだれ様、いらっしゃいませ」「お帰りなさいませ」「またのお越しを」と声を掛ける。そのために人間を置いているわけです。

従って、サービスの機能的な部分も大事ですが、サービスのエモーショナルな部分、情緒的な部分が、お客様の満足度に非常に大きな影響を与える。そういったエモーショナルな部分は教えようがない。一番怖いのはサービスを定型的にとらえ、ワンパターン化してしまうことです。でも、リッツは違います。

サービスの2要素

2要素 ドアマンの例
機能的な部分 アドを開ける
情緒的な部分 お帰りなさいませ

オン・ザ・ジョブ・トレーニング

「人事の四つのキープロセス」の第3プロセスは、「オン・ザ・ジョブ・トレーニング」OJTだ。100種類ぐらいのポジションに関して、すべて認定されたトレーナーが、マニュアルやジョブディスクリプション(作業説明書。筆者訳)やチェックリスト等を用いながら、新しい従業員に対してマンツーマンでトレーニングします。

大事なこととしましては、トレーニングには2種類あるということです。一つは、具体的なスキル(技術)やナレッジ(知識)のトレーニング。もう一つの方は、フィロソフィカル(哲学的)な部分のトレーニング。この両方を含めてリッツはトレーニングと呼んでいます。マニュアルとゴールド・スタンダードについては、「年間再認定」がありトレーニングの修了認定を、年に1回更新します。

2のトレーニング

2つのトレーニング    2つのサービス
スキル(技術)、ナレッジ(知識)の
トレーニング
←対応→ 機能的
フィロソフィー(哲学的)の
トレーニング
←対応→ 情緒的

ラインナップ

最後の第4プロセスは「ラインナップ」です。リッツのラインナップは始業前の職場ミーティング、朝昼礼を言います。ここでは、20項目からなる「ベーシック」を当番が読み上げ、具体的なエピソードを紹介します。そのエピソードを聞き、「自分だったらこうしたい。自分だったらこうする」と意見交換をします。

このラインナップリーダーは持ち回りですが、一ヶ月先行で当番が明示されます。このラインナップで、社員のテンションを上げ、いっきに仕事に入ります。ベーシックは20項目なので1年で18回も繰り返されます。

ほめる、認める

セレクション、トレーニングと来ましたが、更に言えば、これらと同じように大事なのはレコグニションです。

レコグニションというのは、いい仕事したときに認めてあげる、褒めてあげる、表彰してあげる、こういうことです。人間はどこかに褒められたい、認めてもらいたいという心理を持っていると思います。様々なレコグニション・システムを作っています。

ほめる、認める

レコグにションは「ほめる、認める」哲学の実践だ!

例えばリッツ・カールトンでは、従業員のやる気向上のためにファイブスター表彰プログラムがあります。これは、4半期毎に、年間20名の優れたサービスを行った従業員、ファイブスター従業員を選び、表彰する制度です。そして、毎年、その中でも特に優れた活躍をした上位5名を「年間ファイブスター(5つ星)をして選びます。

また、ファーストクラス・カードとい仲間へのお礼カードがあります。使い方は、例えば、急にイタリアンレストランにたくさんのお客様が来たとします。人手が足りないということで和食のレストランから応援に来てもらったとしましょう。すると、お礼のカードを書きます。これは総支配人も書きます。やはり総支配人から直筆サイン入りのファーストクラス・カードをもらうと社員は喜びます。

オリジナルの方は直接、従業員に手渡しまして、コピーは従業員食堂にズラッと飾ります。お客様からのお礼状も全て従業員食堂に掲示しております。こうすることでいい仕事をしたということがみんなで認識し共有できます。

【梶間の一言】

以前からリッツ・カールトン大阪を皆さんに紹介したいと思っていた。リッツのサービスは「ミスティーク(神秘性)」と言われ感動を超えるサービスとして有名なのだ

特にクレドカードが有名だ。リッツのクレドカードとは、会社の信念を名刺4枚分にまとめた、いわば経営計画書だ。リッツのノウハウは横文字が多いが、是非、行間読みして日常の経営に役立てて欲しい。

(参考資料)
・ザ・リッツ・カールトン大阪のホームページ
・プレジデント・ビジョン(ライブレボリューション発行)
・ザ・リッツ・カールトン流「人材育成」のすべて(商業界2002.12)他