増益

増収増益の鉄人:6
和倉温泉「加賀屋」 会長小田禎彦

和倉温泉(石川県七尾市)の大手旅館、加賀屋(小田孝信社長)が、旅行新聞新社主催の「第三十回プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」に25年連続で総合1位に選ばれた。日経が昨年10月に全国の旅館経営者を対象に実施したアンケートで「経営の参考にしたい旅館」の第一位となった。

1940年生まれ。1979〜2000年加賀屋社長。年商97億円(2004/3)。創業明治39年。従業員552名。客室232室。定員1450人

期待以上の満足を生み出すために

小田会長は「追われる苦しみは言い難いものがある」としながらも、「全員が歯を食いしばって、さすが」と言われるサービスをしなければならない。社員に絶えず奮起を求めています。1位には誇りとプレッシャーがあるのです。

そもそも旅館には立地環境、施設、料理、サービスの四つの要素があります。環境は別にして施設と料理は金をかけることで質を高められます。サービスも投資と教育で一定水準まではいきますが、それ以上は社員のプライドや動機づけなど様々な要素が絡んできます。施設も料理もあまり差がない旅館が増えていますが、サービスは絶対に負けないつもりだ」と言います。そこでサービスを中心に加賀屋を探ります。

加賀屋全景:経営のポイント
・環境・施設・料理・サービス
・企画(追加)

接客は「笑顔で気働き」

接客における加賀屋の方針は「笑顔で気働き」です。加賀屋では、サービスを定義しています。「サービスとは、プロとして訓練された社員が給料をいただいて、お客様のお役にたって、お客様から感激と満足感を引き出すこと」。そして、サービスの本質を2つに集約されます。一つは正確性。もうひとつはホスピタリティ。相手の立場に立って思いやる心です。正確性は訓練で直りますが、ホスピタリティは訓練で直らない部分があります。

小田会長の母親であり、先代女将の孝(たか)前会長は、全国の旅館の先駆けとなった女将の客室挨拶(あいさつ)回りをはじめ、客の所望した酒を、タクシーで富山まで買いにやらせた話など、語り草となった数々の逸話が残っています。お客様に対しては「できません」とは決して言わない。ベストができなければベターを目指す。その接客の原点は、常に客の立場に立って、客の満足のために最善を尽くすということ。客の方は「自分のためにそこまでやってくれるのか」と感激し、生涯ひいきにしてくれる、というわけです。

今の加賀屋流もてなしの第一歩は、予約客の宿泊履歴調査から始まります。過去の宿泊客の細かなデータは、コンピューターで管理されています。お客様の食事の好み、飲酒の有無、交通手段、趣味、はたばこの銘柄まで記録しています。例えば、客の車のナンバーを覚えておけば、来館の際、客が名乗る前に「何々様、お待ちしておりました」と迎えることができ、お客様は「さすが」と感激するのです。

  1. 加賀屋の品質方針
  2. お客様の期待に応える
  3. 正確性を追求する
  4. おもてなしの心で接する(ホスピタリティ)
  5. クレーム0をめざす

教育方法

では、お客様に直接接する客室係の教育はどうなっているのでしょうか? 客室係りは入社して直ぐに3日間の集中講義、続いて7日間の教育プログラムが行われます。次にベテランの教育係に付いて2カ月間の実務研修を受け(いわゆるOJTですね)、入社3カ月後の社内審査を通ると、晴れて各フロアに配属となります。そしてフロアリーダーの指導を受けながら、経験を積んでいくのです。入社三カ月以内の新人には「初心者マーク」をつけます。言葉や風土、価値観などに定着するまでの間、十分な対応ができないことを客にも示し、余計なトラブルを避ける狙いです。

働く環境づくり

また、接客係りは女性が多く働き易い環境作りに配慮しています。例えば、企業内保育園のカンガルーハウスがあり子どもがいる女性でも安心して働けます。保育士も常駐し、午前6時から午後11時までの完全保育です。さらに、館内には自動配膳システムが設置され、厨房から客間までの配膳を楽にします。布団敷については専門の外部業者に委託しています。これは接客係りが疲れては笑顔がなくなり、きびきびした接客ができなくなるからです。

クレームゼロ大会

加賀屋ではもてなしが十分に行えるように、宿泊して頂いた顧客にアンケート調査を行い、お客様の苦情、不満、要望を収集しています。このアンケートは、まとめられ必ず幹部会議で報告されます。そして、このアンケート結果を積み重ねて、3月、6月は全社員、9月は一般社員(接客係りを除く)、12月は客室係りを対象にクレームゼロ大会を行いお客様の不満解決策が説明されます。

【梶間のズバリ一言】

加賀屋はIS9002を日本で初めて取ったと旅館です。でも、私はISOが加賀屋で役に立っているとは思いません。先代の女将は、厳しい中に、社員を大事にする優しさがありました。玄関のお見送りの後、後ろを向くと先代の女将が「みんなご苦労さん。ありがとうね!ありがとうね!」と言う。こうされると、皆、イヤな客でも疲れが吹き飛びました。加賀屋連続第一位に理由は、トップの姿勢と経営理念の繰り返し徹底の賜です。