増益

増収増益の鉄人:11
会員1000万人 ベルーナ 安野清

通販業界にあって13年増収増益のベルーナを作った安野経営の秘密を公開しましょう。現在連結売上1150億円。経常利益115億円。

安野清

安野清(ヤスノ)
1944年埼玉県生まれ。24歳で独立。現在61歳。94年店頭公開、2000年東証一部。趣味はゴルフ。

通販開業まで

安野社長の前職は印鑑の訪問販売です。売上はゼロから創業し、最高で35億円までに育てました。しかし、80年代に入ると、安野は「印鑑の訪問販売はこれ以上の市場拡大は見込めない」と新たな事業を探します。83年、通信販売事業に参入。始めは頒布会でスタートし、一年後には同分野でトップとなりました。判子の通販でコツはわかっていので、通販は比較的スムーズに離陸できたのです。1986年、総合ファッションカタログ「ベルーナ」を発刊。

会員1000万人

ベルーナの最大の財産は、積み重ねて集めた1000万人の顧客名簿です。特に、ベルーナは50〜60代のハイミセスマーケットに強くトップシェアです。この世代は、時間と資産に比較的余裕がある人達です。では、ベルーナでは、この顧客リストの使い方・売り方はどうなっているのでしょうか。

ワン・トゥ・ワン・マーケティング

ベルーナの販売には2段階あります。ひとつは集客です。ラジオ、テレビ、月刊誌、週刊誌、新聞の折り込み広告というものでまずお客さんを集めます。これで年間100万人以上の会員が増えています。

第二段階では、集めたお客様のリストを活用します。お客様リストには住所、氏名、生年月日、性別などのデータをコンピュータでデータベース化し、お客様の購買傾向に応じてダイレクトメールを送付します。だから、売上構成比は会社が成熟していくと第二段階でのDM売上が多くなり、折り込みチラシ等のマス媒体の売上というのは減ってきます。

つまり、通信販売のポイントはどういう顧客がいるかを把握して、ダイレクトメールを送るのです。

RFMの実践

ベルーナの通販の場合は、RFMをキーワードとして、リストのランキングを作ります。Rというのはリーセンシー、いつごろ購入したのかというデータ。Fはフリークエンシーで何回ぐらい購入したのか、Mはマネタリーでいくら購入したのか。このランキングの高い順にダイレクトメールを送っていくのです。ほかにも購入商品と年齢の関係を組み合わせて同様にランキングして、カタログを送ることもしています。

ベルーナでは、商品アイテムによって、どの顧客にどんなカタログを送るかという振り分けがコンピュータで全部できるのです。これは特にワン・トゥ・ワン・マーケティング(個客マーケティング)と言い、そのお客さんに合ったオリジナルの商品を提供すると言う販売方法です。

こうして、魚のいる所に餌をまくように商売します。ベルーナでは、DMを発行すると、反応率は1%〜13%程度になります。左利きの人には、左利き用のカタログを送ると反応率が高いのです。商売は「顧客志向・顧客密着」という理念の連続です。

新媒体・販売方法の開発

ベルーナは常に、お客リストをにらんで、新媒体の開発に努めています。例えば、男性にはメンズベルーナを発刊し反応を見るのです。ベルーナでは、テストして効率よい新媒体を探していきます。

今では、展示会販売にも力を入れています。これは社内ではガレーム事業と言っています。手に取らないと分からない商品、例えば呉服などは展示販売するのです。展示販売ではベータベースの特性、地域特性を考えた企画で販売します。

またインターネット、TVショッピングにもチャレンジしています。

通信販売業界は今、紙からネット・モバイルへと大きな時代の変化の波にさらされています。ベルーナではネット・モバイル化への対応が出遅れておりましたが、今年に入って本格的に取り組む体制を構築し、今後急速にこれらの分野を伸ばす考えです。そして、やがてはネット・モバイル通販の売上が紙媒体の売上と逆転する日もそう遠くないことと予測しています。

商品開発

現在、ベルーナの主力商品は何か。商品テーマは、「衣、食、住、遊」にあります。具体的なメイン商品は衣料品関係で、売上の42%から45%を占めています。後は家具、雑貨、インテリア、食品、健康器具……といった具合です。

今は、マッサージ機が売れるような癒しの時代。商品構成の柱は、@実用定番商品のラインナップ、A機能商品・お悩み解決商品、Bオリジナル商品、Cコーディネート商品に分かれます。

値頃感

安野社長の顧客志向・顧客密着を合言葉に、顧客満足度の向上に全力投球を続けます。また、高い品質の商品を、「値ごろ感」のある価格で提案します。通販商品のコツは値頃感です。

というのは、本当に興味や関心がある人は通販ではあまり買いません。「多少興味がある」みたいな層が顧客となるのです。例えば以前ベルーナでは、掛け軸を販売していたんですが、掛け軸を通販で買うという人は、本当に興味がある人じゃないです。多少興味あるという人が、値ごろ感にひかれ買っていくんです。洋服も同じです。洋服のサイズはSMLだけでお客さんが服を通販で買うのは値頃感なのです。

顧客満足度を高める

通販でリピーターのお客さんの割合はどのくらいですか。売上構成で見ると、2度目以降のお客様が8割とほとんどがリピーターです。そういう意味では、固定客をいかにつくり、継続的にお客様になってもらうかが経営の一つのポイントです。

そのためにも「顧客満足度」を常に高めることがベルーナのテーマとなっています。特に商品のクオリティーと配送時問、つまり注文を受けてからいかに早く届けるかが大事な点です。今後、物流システムの整備をさらに進め、これを年々短縮しようと努力します。

今は受注から発送までの期間は、大体平均して8日から10日です。これを5日から6日に短縮することがこれからの努力目標です。ただ、商品によっては、当日の午前中に注文が来たら午後に発送する場合もあります。

ベルーナでは、海外や全国各地から集まる商品を、関東に展開する4つの物流センターに集約し、ITシステムを活用して物流を効率的に管理しています。今後は、品質管理と効率化、ローコストオペレーションを徹底し、お客様へより「早く」「安く」「確実に」商品をお届けできる体制を整えていきます。

更に、ベルーナは素材調達から工場生産の集約化、物流・保管機能の合理化等の、いわゆるサプライチェーンマネジメントの構築に本格的に取り組んでいます。

また、ちょっと気になる通販の返品率はベルーナでは10%程度です。裏話ですが。

ローコスト経営

通販の収益性は実は広告宣伝費、媒体費で決まります。現在、媒体費の割合は売上の四分の一弱。そうした意味ではお客様に支持される商品を開発しなければ、宣伝費ばかりかかって物が売れない状態に陥ります。やはり、ターゲットとなるお客様と商品のマッチングを政策の基本にしなければなりません。

後は顧客志向、顧客密着を徹底させること。お客様の利益を第一に考え、値ごろ感、利便性、デザイン、新鮮さなどをさらに追求していかなければなりません。

ベルーナには、1日3万件の受注があります。申し込みから入金までコンピュータで管理し、自社の配送センターから効率的に配送します。

若い社員

ベルーナの社員は若く元気です。平均年齢27歳。だから、中には経験の少ない社員もいます。専門知識が足りない分野はアウトソーシングで対応します。安野社長も「若手は失敗の中から学ぶ」と寛容です。

ベルーナでは、仕事のゲーム化を進めています。具体的にはインセンティブ制度があります。これは、部門、チーム、個人別に報償金を出したり、表彰する制度です。だから、ベルーナの社員には意欲と競争意識が高いのです。組織はフラットで社長の方針が末端まで早く伝わります。若手を使うことは「仕事のゲーム化」がコツです。

ポートフォリオ経営

安野はこれからのベルーナにポートフォリオ経営を推進しています。

1000万人のお客様に対してより利便性を高めるため、衣服や雑貨をはじめ、全国各地の名産品や食料品、ガーデニング用品、家具、化粧品などの通販に加え、さまざまなサービス部門の充実を図っています。このようにお客様を基点に、バランスの良い、偏りのない商品群をもつ、いわゆるポートフォリオ経営を行っており、これが業績の安定した発展に寄与するのです。

【 梶間の一言 】

ベナールは、私が8年前から注目していた企業だ。ベナールは、顧客リストを毎年毎年増やしながら、既存顧客に商品の提案をし続ける。私の言葉で言えば「重ね売りだ」。よくマーケティングの世界では、ワン・ツゥ・ワンマーケチングと言うが、ベルーナはそのみごとな実践者だ。

私は気づかなかったのは、社員の平均年齢が27歳で、社員の動気付けに「仕事のゲーム化」を採用していたことだ。思わず、ドンキホーテで、社員の番付表を作り社員同士が競い合っているのを思い出した。

ベナールの経営を一言で言えば、「顧客志向・顧客密着」を合言葉に、新しい販売の媒体を「仮説→検証」で探し続ける、新しいスタイルの通信販売会と言える。